【読後感想】「里山資本主義」 by 藻谷 - TopicsExpress



          

【読後感想】「里山資本主義」 by 藻谷 浩介、NHK広島取材班 「里山資本主義」とは、「マッチョなグローバル資本主義」の対極にある、地産地消ベースの「しなやかな」生活の仕組みです。 10年前には¥80台だったガソリンが、今やほぼ2倍の¥150台。 311で首都圏が経験した、空っぽになったコンビニ・スーパーや、薄暗い地下鉄ホーム。 遠くの出来事が個人の生活を直撃するという事態が、グローバル経済の特産物である大都会を次々と見舞っています。 世界の指導層が世の中の枠組みを巨大化することだけに猪突猛進するのに対し、「里山資本主義」は「どーどー」となだめます。 里山活用の先進例(エネルギー自給率72%)である、オーストリアのギュッシング市長。 「エネルギーの輸入は私たちに何の利益ももたらしません。毎年数百万ユーロがこの町から消えてしまうだけだからです。利用されないまま何千トンもの木材が廃材として森の中で朽ちていくのに、なぜわざわざ数千キロも離れたところから天然ガスや石油を運んで家やアパート暖かくするのか、と疑問に思ったのです。」 身近な森林資源を徹底的に利用した結果、好転したのは収支だけではありませんでした。 林業に始まり、ペレット加工、林業重機やボイラーなどの機器製造、果てはペレット配達や煙突掃除まで、幅広く大量な雇用機会が生まれ、ギュッシング市を飛び越えて周辺地域住民にまで恩恵が及びました。 林業という一次産業であるがゆえの、裾野の広さ。 国土の67%が森林(オーストリアは47%)という、世界でも有数の森林国である日本ではどうでしょうか。 84%と国内最高の森林率を誇る高知県が、実は赤字率ワースト。 赤字の内訳を見てみると、エネルギーが1000億円と最高額を叩き出しています。 身近にある資源は腐らせたまま、なぜわざわざ遠くのアラブからエネルギーを買っているのでしょうか。 しかも高いお金を払って、だけじゃなく、高いリスクを背負ってまでして。 遠くのアラブの産油業労働者とは縁もゆかりも生まれませんが、近所の木こりさんとの縁はすぐに生れます。 地域の絆も強まる。 チルチルとミチルは、幸せの青い鳥が最初から自分たちの寝室にいたことに気づきませんでした。 岡山県で「欲しいものはすべてすぐ近くにある」を実践してらっしゃる田中優さんが、「貧困大国アメリカ」や「政府は必ず嘘をつく」の著者である堤未果さんのJ-WAVEの番組で対談し、驚くべき自給生活について話してらっしゃいます。 (Dailymotion:堤未果 x 田中優「電気の自給生活 完全オフグリッドライフ」) 田中さんは対談の中で、「ギリシャなどの危機に見舞われた欧州各国は、どこもエネルギー自給率が低い。一方で同じように危機に見舞われたが、政府が「債務は返済しない。」と前代未聞の超強気な態度に出れたアイスランドは、エネルギー自給率が100%。」と指摘してらっしゃいます。 何でも身近なもので事足りる生活のほうが、安全で安心ですよね。 しかも森林管理の大切さは、神道の根幹でもあります。 神前に榊を捧げるのは何故か、ご存知でしょうか。 榊というのは中低木で、森が密すぎて疎すぎても健康に育たない木です。 つまり、榊の健康状態は森の健康状態を表す指標。 青々と輝く榊の枝葉を神前に捧げるのは、神様に対して人間の使命を果たしているという報告なのです。 森は多種多様な生命を育む、居心地の良い「おうち」です。 60年代の乱伐後に乱植した杉がほったらかしにされた結果、杉の木たちの住環境がどんどん悪くなり、本来は数百年生きながらえる杉の木たちが、大量に死にかけています。 死を目前にした生命の当然の反応として、最後の力をふりしぼった生殖活動が、大量のスギ花粉となって僕たちに襲い掛かってくる。 人間の使命を忘れたことに対する、当然の報いかもしれないですね。
Posted on: Sun, 10 Nov 2013 00:49:55 +0000

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